マッコリ

マッコリ
韓国料理が好きです。
辛いのを「ヒーヒー」と言いながら。
熱いのを「フゥーフゥー」しながら。
結果的に「ヒーヒーフゥー ヒーヒーフゥー」と言いながら。

そんなラマーズ法……じゃなくて韓国料理のお供といえば、なんといってもマッコリですよね。
まるでヨーグルトのような甘みと、ほのかな酸味は、お酒といえどジュース感覚でグビグビいけちゃうわけです。
なもんだからお店で注文する時はグラスでチビチビいくより壺でガッツリいっちゃいます。
それでも足りずに製造時の甕(かめ)ごといっちゃいたいくらいです。
それでも足りずにって方には耳寄りな情報!
韓国の人里離れた山奥には、なんとマッコリの湖があるとか無いとか。
(無いですね)

と聞けば向かわずにはいられないのがマッコリ好きのサガです。
もちろんマイ柄杓(ひしゃく)を持参。
著名なツアーコンダクターすら知らない山道を歩き、生い茂った草木をかき分けていくと、そこは乳白色の大きな湖面が広がります。
僕はほとりにしゃがみ込むとマイ柄杓で湖のマッコリをすくい口に含みます。
今まで飲んだどんなマッコリよりも美味しく神秘的で僕は感動のあまり全身の力が抜け、持っていた柄杓を水中に落としてしまいました。
柄杓はあっというまに見えなくなり、水面では波紋が悲しく輪を描きます。
1本しか持ちあわせていなかった柄杓を落とした僕は落胆のあまり膝から崩れ落ち呆然としました。

すると、さっきまで穏やかだった水面の一部が突如光出し、その淡い黄金色の光に包まれ、水中から湖の女神様が現れ僕に問いかけました。

『お前の落としたのはこの金の柄杓か?』

女神様は終日マッコリの中に滞在しているだけあり、その口調は全くロレツが回っていませんでした。
フラフラで水面で立っているのもやっとのご様子。
かろうじて女神様の言葉を聞き取った僕は答えました。

「いいえ違います」

マッコリ1

『では、この銀の柄杓か?ヒクッ』

「いいえ、僕が落としたのは地元のホームセンターで買ったプラスチックの柄杓です」

『お前は正直者だ、誉めてつかわす』

そう言うと女神様はまた水の中へと戻っていきました。

「え?誉めただけ?! 金・銀両方貰えたりとかでは…」

結局プラスチックの柄杓すら戻ってこなかった僕は浴びるようにやけ酒のマッコリです。

どれだけ飲んだことでしょう。
気がつくと、ひたひただった水位が3分の1以下になっています。
先ほど水中に消えた女神様の顔がちょっくら見えていて、目が合うとお互い気まずそうに軽く会釈をしました。

僕は酔いつぶれてその場で眠ってしまい、気がつくとすっかり辺りは暗くなりキレイな満月が静かな湖畔をやさしく照らしています。

こんなとき、僕が韓国語を話せて女神様ともっとコミュニケーション出来ていたら、プラスチックの柄杓だけでなく、金の柄杓も銀の柄杓も貰えたに違いない…
ついでにスワロフスキーの柄杓もバカラの柄杓も貰えたに違いない…
もっと早くこの本と出会っていたら…

さて、NAHA韓国語教育研究会さんから発刊の書籍、「カードで鍛える韓国語 入門単語編」4級レベルと5級レベルの表紙と中面にこの度イラストを描きました。

こちらの書籍、なんと本紙を切り離してリングで繋げば単語カードにもなる優れモノ!
忙しいサラリーメンやオフィスレイディーでも通勤中やちょっとした休憩時間にも手軽に勉強出来ちゃいます。

さぁ、皆さんもいち早く韓国語をマスターしてマッコリ湖でプラチナ柄杓をゲットしましょう!
(そんな湖ないってば!)

Ⓒイラストレーター トツカケイスケ