寒い夜はカラダの中から暖まろう。
さらにはカテキンも摂取しちゃおう。
そんな思いで緑茶を入れようと意気込んだ矢先、愛用のマグカップが見あたらない。
ケータイやテレビのリモコンならまだしも置くとしたらキッチンか仕事のデスク、食事用のテーブルくらいなのにそのどこにも見あたらないとは前代未聞の珍事件だ。
しかも、しがない一人暮らしの狭い部屋、ちょこっと見渡せば見つかりそうなもの。
幼少の頃、こじんまりとした近所のスーパー『キンカ堂』で親とはぐれた僕は近くにいたスタッフに迷子のお知らせをお願いしたところ、駆けつけた母親から「1フロアしかないんだから自分で探しなさい!」と叱られたのをなぜか思い出した。
そんなこんなで僕のマグカップ探しが始まった。
ひょっとしたら…と思い冷蔵庫の中を覗いてみる。
無い。
さすがにここには…と思いながらもトイレの中を確認してみる。
(お食事中の方、すみません)
やっぱり無い。
まさかね…と思いながらもお風呂場も覗いてみる。
もちろん無い。
そんな折、ふと「灯台もと暗し」という俳句が頭をよぎる。
(どちらかというと諺ですけど…)
よくお爺ちゃんが「メガネ、メガネ」と探していたら結局おでこに掛かっていたというお茶目なアレかもしれない。
そう思い、僕はおでこに手をやるも、虚しく空をきった。
ま、あったらあったでアレだけど。
さて、これだけ探しても見つからないとなると、はたして置き忘れによるものなのか…
ひょっとしたら何者かに盗まれたのでは?!
頭の中に、普段は喫茶店を営む美人3姉妹のレオタード姿がよぎった。
僕はキャッツアイからの予告状が届いていないか部屋を見渡してみる。
しかし、それらしいカードは無く、あるとしたら
たかはしクリーニングの誕生日割のクーポンくらいだ。
さっきまであったはずの物がなぜ急に無くなったのか…。
皆目検討も付かない。
こうなったら最終手段として、千里眼を持つと言われる元FBIのジョー・マクモニーグルに依頼をだそ…
あ、このくだり前にも使いましたね、失礼。
さてさて、普段は何気なく接していたマグカップなのに、いざ無くなってみるとその存在の大きさに気づく。
もっと大事にしてあげればよかったな…。
目を閉じると、マグカップとの楽しい記憶が次々と蘇ってくる。
代官山の雑貨屋で出会ったときのこと。
モーニングコーヒーを共にしたこと。
キッチンハイターで茶渋を漂白したこと。
そういや、普段は左手で持ってたけど、たまに右手で持つこともあったよなぁ。
気づくと僕の頬を一筋の涙が流れていた。
しかし、これだけ探しても見つからないってことは、そもそも僕の家にマグカップなんて無かったのかもしれない。
というより、マグカップなんてもの自体そもそも存在しておらず、天狗や河童のように、我々人間が作り出した想像上の物なのかもしれない。
そんな思いにもかられた。
そうこうしているうちに、絡み合った糸がほどけたように
数時間前の記憶が蘇った。
結果、みごとにマグカップと再会を果たした。
ま、なんてことないある場所でした。
さて、ここでクエスチョン。
そのある場所とは一体どこだったでしょうか?
答えが分かった方は、ハガキに住所・氏名・年齢・電話番号と答えを記入の上ドシドシご応募ください。
不正解者のなかから抽選で1名の方に、正解をお教えします。
(なんだそれ?!)
Ⓒイラストレーター トツカケイスケ